松帆神社ブログ第5回・刀剣の聖地 備前長船刀剣博物館

松帆神社ブログ第5回は、刀剣に詳しい方なら皆さんご存知の岡山県東部の備前の地に建つ「備前長船刀剣博物館」の訪問記です。長船の地は古くは備前国邑久郡(おくぐん)、今の瀬戸内市にあり岡山三大河川 吉井川流域に開けた地でありましたが、鎌倉時代初期より刀剣鍛冶の集団が集まり「長船派」として全国に名を轟かせました。

松帆神社の社宝・菊一文字の作刀に深く関わった名刀工・則宗も長船の福岡地区に自らの刀工集団・福岡一文字派を興したと伝わっており、菊一文字にとっても非常に縁の深い地という訳です。

備前長船の地までは、松帆神社の近くの東浦ICから一部高速・大半を国道2号線を通って約2時間弱の行程で到着しました。吉井川の近く、田園と住宅が混ざり合うよくある地方の風景の中に刀剣博物館は建っておりました。

 

備前長船刀剣博物館は、それ単体だけではなく、実際に日本刀を製作する鍛刀場や、刀身の研ぎや鍔(つば)・鞘(さや)の製作等を直接見学できる工房、お土産屋さんや刀剣直売所などを併設しており、その全体を合わせて「備前長船刀剣の里」と呼ばれています。中でも、実際に目にする事は大変難しい刀剣の火入れ・鍛刀の様子を月2回公開されており、刀剣に興味がある方にはたまらない場所となっています。

訪問当日は鍛刀公開の日ではありませんでしたが、刀の原料になる玉鋼(たまはがね)を高熱で熱する作業を行っておられた為大変興味深く拝見しました。

 

※上は鍛刀場や各工房の様子。入館者は自由に見て回る事が可能。下は鍛刀場で玉鋼を熱する準備をされている様子。右下の水槽の中に投入しようとする玉鋼が置いてあります。

 

また、刀剣マニアを自認するような方以外はなかなか普段は目がいかないような、鞘(さや)や柄(つか)等、個別の部位に関する作業や展示を各工房で見れるのも刀剣の里ならではではないでしょうか?ここを見て回れば、刀剣の知識を一通り身に着けられる位の情報量です。

 

※上は鞘(さや)の工房で作業されている様子。下は、刀の柄(つか/刀を握る部分)に巻き付ける鮫皮(サメと言いながら本当は東南アジアの海域に生息するエイの仲間の皮だそうです)。

 

さて、刀剣博物館の中に足を運びますと、一階・二階には備前の名刀剣だけでなく、貴重な刀剣が多数展示されております。また、過去にはエヴァンゲリオンやゲームとコラボした企画展を開催されるなど、話題作りにも心を砕いておられるようです。大変残念ながら、一階・二階の刀剣の展示物については「撮影禁止」という事でしのでここではご紹介できません。残念。

代わりに…という訳ではありませんが、刀剣博物館の一階には刀剣に詳しくない方にも刀剣の作刀の流れを分かり易く解説してくれる展示コーナーがあり、こちらは撮影OKでした。

 

作刀の手順を大変分かり易く解説したパネルとビデオ上映で15分あれば誰でも刀剣がいかに作られるのか、一通り知ることができるようになっています。

 

 

 

また、刀身そのものだけではなく、刀身の研ぎの作業や、鞘(さや)や柄(つか)、鍔(つば)といった刀剣に関わる各部位の作成についての解説パネルもあります。

 

 

 

実は、この日に刀剣博物館を訪問させていただいたのは、こうした展示を見るのもさることながら、初心者にも刀剣の手入れ方法を分かり易く解説して下さる「日本刀手入れ講座」に参加する為でもありました。当日は岡山市にある高山刀剣研磨工房の福武審一先生が、本当に分かり易く、時には刀剣の素人は知らない裏話も交えながら一時間ほどレクチャーをして下さいました。

 

刀剣の手入れと言うと、大変敷居の高そうな話で、この講座を受講するまでは自分にできるのか…と半信半疑でしたが、守るべき手順を明確に示していただき、それをしっかり守れば決して困難な作業でない事がよく分かりました。こちらの講座は事前に予約するだけで参加料も不要ですので、刀剣を新しく購入してみようと思っておられる方、刀剣は持っていないけども扱い方には興味があるという方にもお勧めです。刀剣博物館のHPに開催日程が告知されていますので、ご確認の上 直接お申込みになって下さい。

実は今回この日本刀手入れ講座を受講したのは、これまで菊一文字の手入れをお願いしていた近隣の刀剣愛好家の方が体調を崩され、手入れに関しては自力で何とかしないといけなくなった為でありました。講座の中で、手入れ方法だけでなく道具の選定についてもアドバイスをいただいたので、早速淡路島に戻ってから神戸の刀剣専門店さん等で道具を揃えました。勿論、手入れもしたのですが緊張していて撮影の余裕がなかった為、こちらはまた別の機会にご紹介させていただきます。

 

今回、訪問させていただいて、書物を読んで一応知っていたつもりの刀剣の世界の知識が具体的な展示物を見せていただく事で有機的につながり、非常に有意義な時間となりました。日本の刀剣の世界においては正に聖地の一つとも言える場所だと思います。東京方面にお住まいの方はちと行くのが大変ですが、刀剣に興味があるのであればオススメです。学芸員さんとお話しましたら、これからも色々面白い企画展を検討されているようでしたので、私も折に触れてチェックしておこうと思っています。

2016年11月09日